トンボ・ビオトープは池を掘り、植栽を行って完成ということではありません。むしろ、そこからがビオトープ造り本番となります。田んぼも畑も、適切な管理と活用によってその形状が維持されていることと同様なのです。
トンボ王国のスタッフは新年早々、前年晩秋から開始しているスイレン抜き作業に取り組みます。この作業はトンボの羽化が始まる3月中旬までに終了させなければなりません。この間、摂食のため連日やってくるイノシシによって破壊された観察道や畦の補修も怠ることができません。油断していると、水の中で冬越ししているヤゴたちが干上がってしまうからです。
見学者が増えてくる春休みが近づいてくると、駐車場や観察道への土入れやハナショウブの株分け作業を行います。春休みが終わるといよいよ本格的な草刈作業が始まります。遠足や総合学習などで訪れる学童が体験学習で利用する多目的広場の除草やカキツバタ池に侵入したマコモ抜き、ゴールデンウイークが終わるとハナショウブ池の透き刈りが待っています。入梅以降、夏休みまで広大な保護区内を2〜3名のスタッフが草刈機を友に、まるで「イタチごっこ」のように夏草と戦い続けるのです。
9月に入ると赤トンボの産卵場となる湿地保護区全体の除草を行います。秋本番を迎えるころ、イノシシ被害を最小限に食い止めるために湿地保護区の畦を中心に、杭打ちやロープ張りを行います。そして、ほとんどのトンボたちが活動を終息させる11月中旬から、トンボ池のスイレン抜きが始まるのです。
このほかにも台風などによる、急な出水で破損した観察道や畦の補修、特定外来生物のオオフサモの除去などの作業も適宜行っています。
自然保護といえば聞こえは爽やかですが、実際は精神安定剤としての「トンボ」という作物を栽培あるいは養殖している、といった方が正確かもしれません。 |