トンボ王国と花
トンボ王国と花
 トンボ保護区の整備に際し、より多くの人々にトンボやトンボの生息地を好ましいものと感じてもらえるよう、当初からトンボの生活に支障がない範囲で、きれいな花を咲かせる植物を積極的に導入、または刈り取らないよう努めています。代表的なものは、5月上旬のカキツバタ約3万株、6月上旬のハナショウブ約1万株、夏期のスイレンは毎朝約3千輪開花などです。

 なお、入り口周辺は園芸植物を多く用いた華やかな空間としていますが、谷奥は、日本の里山に自生する種類を中心とする「癒し(いやし)」の空間づくりを心がけています

   
春   夏   秋
スイレンの話

 トンボ誘致池に多い温帯スイレンは、当初「安並のため池」再現を目指していた杉村が、そこで多く栽培されていたスイレンこそトンボ類が好む植物であるに違いないと勘違いして持ち込んだものですが、余りにも繁殖力が旺盛で1988年からはむしろ厄介者扱いとなり、スタッフ総出でのスイレン抜きは冬季の風物詩にもなっているほどです。


スイレン・ピンク   スイレン・白   スイレン・黄色
スイレン・ピンク   スイレン・白   スイレン・黄色
冬季のスイレン抜き   初夏のスイレン池   盛夏のスイレン池
冬季のスイレン抜き   初夏のスイレン池   盛夏のスイレン池

スイレン抜き

 この作業を初めて目にされた方から、「大変ですね」の次に「どうしてですか?」とのご質問をよく頂きます。ご存知のように、スイレンはきれいな花を咲かせるので「もったいない」との含みもあるのでしょう。ということで、この件についてご説明を少々。トンボ誘致池が多くの人たちから好意的に受け止められるよう、審美的景観創出の観点から、イトトンボなどが「なわばり」の足場や「産卵」に利用する自生のヒシなどの代わりとしてスイレンを導入しています。ただ、国外が原産のスイレンは繁殖力が旺盛で、その葉があっという間に水面全体を覆ってしまいます。池や湿地など止水域では、キクモなど沈水植物の光合成および、降雨や風波で水面がさざなみ立つことによって水中に酸素が供給されています。スイレンの繁茂はそれらを阻害し、ヤゴを始めとする多くの水生動物の生存を困難にさせます。また、スイレン自身も一定の日照が得られなければ蕾の成長が妨げられてしまうようで、水面いっぱいに葉を広げてしまうと、花付きも悪くなってしまいます。そもそも生物の「生きる目的」は遺伝子の拡散にあるのですから、飽和状態になれば子孫を増やすために花を咲かせる必要がなくなるわけで、間引きしてやると慌てて繁殖モードのスイッチを入れてくれるような感じでしょうか。


とんぼ館・中庭ビオトープのスイレン
ペリーズ・ベイビー・レッド   ホワイト・1000ペタルス   マンカラ・ウボン
ペリーズ・ベイビー・レッド   ホワイト・1000ペタルス   マンカラ・ウボン
         
タン・クワン   とんぼ館中庭のスイレン池   ペリーズ・ファイアー・オパール
タン・クワン   とんぼ館中庭のスイレン池   ペリーズ・ファイアー・オパール

 四万十川学遊館あきついお・とんぼ館中庭ビオトープにも小さなスイレン池があります。ここでは観賞用として、特に美しく改良された品種を集めています。この池には絶滅危惧種ベニイトトンボも暮らしています。

カキツバタ

 初夏を代表する花、カキツバタの多くは、1986年に賃貸契約で保護区となった廃棄田の片隅に植えられていた10株ほどを増殖させたもの。3万株ほどに増えた現在、各地のトンボビオトープにも贈られるようになっています。


カキツバタ・通常タイプ   カキツバタ(白花)   カキツバタ(中間色)
カキツバタ・通常タイプ   カキツバタ(白花)   カキツバタ(中間色)

ハナショウブ

 現在、1万株が栽培されているハナショウブは、イトトンボなど乾燥を嫌う小形のトンボたちへの加湿器となるよう、自生のイグサやガマの置き換え植物として取り入れたものです。トンボの保護という視点に立てば、むしろ花が散った後の方が大切な存在となっています。


満開のハナショウブ池   スイレン・白   スイレン・黄色
満開のハナショウブ池        
スイレン・ピンク   スイレン・白   スイレン・黄色   スイレン・黄色
トンボ王国でみられる主な品種


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