この作業を初めて目にされた方から、「大変ですね」の次に「どうしてですか?」とのご質問をよく頂きます。ご存知のように、スイレンはきれいな花を咲かせるので「もったいない」との含みもあるのでしょう。ということで、この件についてご説明を少々。トンボ誘致池が多くの人たちから好意的に受け止められるよう、審美的景観創出の観点から、イトトンボなどが「なわばり」の足場や「産卵」に利用する自生のヒシなどの代わりとしてスイレンを導入しています。ただ、国外が原産のスイレンは繁殖力が旺盛で、その葉があっという間に水面全体を覆ってしまいます。池や湿地など止水域では、キクモなど沈水植物の光合成および、降雨や風波で水面がさざなみ立つことによって水中に酸素が供給されています。スイレンの繁茂はそれらを阻害し、ヤゴを始めとする多くの水生動物の生存を困難にさせます。また、スイレン自身も一定の日照が得られなければ蕾の成長が妨げられてしまうようで、水面いっぱいに葉を広げてしまうと、花付きも悪くなってしまいます。そもそも生物の「生きる目的」は遺伝子の拡散にあるのですから、飽和状態になれば子孫を増やすために花を咲かせる必要がなくなるわけで、間引きしてやると慌てて繁殖モードのスイッチを入れてくれるような感じでしょうか。 |