トンボ撮りのすすめ
トンボ撮りのすすめ
トンボ撮りのすすめ
 始めてみれば心身とも、思わず泥沼の世界にはまってしまう人も多いトンボ撮り。書く言う私もすでにトンボ撮り歴は40年近くになりました。トンボファン拡大のため、とにかく「きれいな写真」獲得に腐心してきたつもりです。ある時、マスコミ関係の方から「どんな機材を使っているのですか?」と尋ねられ、手許の機材を披露したところ、「写真は道具ではないことがよく分かりました」とのご感想。一瞬、複雑な気持ちになりました。
そこで、先ずは愛用?の機材紹介から。トンボ王国ミニガイドに掲載している画像の大半もこれらの組み合わせで撮影したものです。
 
トンボ撮りのすすめ
 
 トンボの撮影といえば、長い望遠レンズを大きな三脚に取り付けて追いかけている人をよく見かけます。ただこの方法だと、止まっているところならまだしも、動き回っているものにはとても太刀打ちできません。また写真の基本はより接近することで、臨場感あふれるシーンはやはり接写に限る…と私自身は考えています。そこで皆さんの参考になりそうな具体例を紹介してみます。
 
同じ被写体による比較
同じ被写体による比較   同じ被写体による比較
望遠レンズ100-400mmを400mmとし、接写リングとストロボを組み合わせた作品   24-105mmレンズのズームリングを105mmとし、クローズアップレンズとストロボを組み合わせた作品
     
同じ被写体による比較   いかがでしょうか。望遠レンズの作品は
平面的ですが、接写での作品は立体的
な印象を受けるのではないでしょうか。
また望遠では周りの状況がほとんど分か
りませんが、接写、それもレンズを24mm
まで短くすると、どんなところにいるのか
がはっきり分かるのではないでしょうか。
24-105mmレンズのズームリングを24mmとし、クローズアップレンズとストロボを組み合わせた作品    
 
望遠レンズを使用する作品
 望遠レンズを使用するのは、めったに見られない場面を確実に押さえておきたい時や、どうしても押さえておきたい場面にもかかわらず被写体のトンボに落ち着きがなく、接写が困難と予想される時などに留めています。
望遠レンズを使用する作品   望遠レンズを使用する作品
100-400mm望遠レンズに接写リングとストロボを組み合わせた作品。 (ギンヤンマ♂とコシボソヤンマ♀との異種間連結)   100-400mm望遠レンズに接写リングを組み合わせた作品。
(ハネビロトンボの間歇打水産卵)


 接写撮影で気をつけたいのは、レンズをトンボの目線まで下げるということです。すると草間など、天敵には見つかり難く、トンボ自身からは見通しがいい場所を選んで活動していることもよく理解できます。逆光で体色が黒ずんで見えるときなど、必要に応じストロボを使用しますが、背景が暗くなり過ぎないよう光量を調節します。また、地面や水面近くで活動しているトンボにはアングルファインダーが力を発揮してくれます。なお三脚は、60分の1以下といったスロー・シャッターを切る時以外は基本的に使用していません。


望遠レンズを使用する作品
24-105mmレンズにクローズアップレンズとストロボを組み合わせた作品。
(ホテイアオイの花に止まるコフキヒメイトトンボの♂)
 
望遠レンズを使用する作品
24-105mmレンズにクローズアップレンズとアングルファインダーを組み合わせた作品。
(キイトトンボの連結産卵)
望遠レンズを使用する作品
24-105mmレンズにクローズアップレンズとストロボを組み合わせた作品。
(タイワンウチワヤンマの♂)
 
望遠レンズを使用する作品
100-400mm望遠レンズに接写リングを組み合わせた作品。
(ネジバナの花に止まるハッチョウトンボのオス)

 
 同じトンボを撮影するにせよ、どこで撮ったのかが分かればより楽しい作品になります。そこでお次は、思いっきりトンボに近づいて広角撮影した作品の紹介です。
望遠レンズを使用する作品   望遠レンズを使用する作品
24-105mmレンズを24mmに設定、これにクローズアップレンズとストロボを組み合わせた作品。
(四万十川のベニトンボ♂)
  24-105mmレンズを24mmに設定、これにクローズアップレンズとストロボを組み合わせた作品。
(スイレン池のチョウトンボ♂)
     
望遠レンズを使用する作品   望遠レンズを使用する作品
24-105mmレンズを24mmに設定、これにクローズアップレンズとストロボを組み合わせた作品。
(天狗高原のアキアカネ未熟♂)
  24-105mmレンズを24mmに設定、これにクローズアップレンズを組み合わせた作品。
(旧吉野川のナゴヤサナエ♂)


 トンボに対し上手に近寄るコツは、姿勢を低くして上体を左右に揺らさないこと。止まっているトンボが警戒して飛び立った時には、一旦後方に下がって様子を伺い、トンボが再び止まったところで接近も再開します。トンボが飛んでいる時には、余り深追いしないようにしましょう。一度接近した後で構図を変えたい時には、一旦真っ直ぐ後方に下がり、一定の間合いを取ってから角度を変え再接近します。至近距離のままカメラや体を横にずらすと、驚いて逃げ出してしまうことが多くなります。
なわばりを作っている♂では、成熟したてで初めて水辺に戻ってきた個体や、老熟個体が接写対象として扱いやすいようです。


 フィルム代がかからない、デジカメならでの撮影法は「ノーファインダー」です。予めシャッタースピードや露出、ピント合わせなどを決めておき、ファインダー画像に頼らず肉眼だけでシャッターチャンスを決めます。この方法は高速で飛ぶトンボや瞬間的に訪れるシャッターチャンスに対し極めて効果的です。
望遠レンズを使用する作品   望遠レンズを使用する作品
24-105mmレンズを24mmに設定、これにクローズアップレンズとストロボを組み合わせた作品。
(コシボソヤンマ♂)
  24-105mmレンズを24mmに設定、これにクローズアップレンズとストロボを組み合わせた作品。
(オオキトンボの連結産卵)
     
望遠レンズを使用する作品   望遠レンズを使用する作品
24-105mmレンズを24mmに設定、これにクローズアップレンズとストロボを組み合わせた作品。
(オオシオカラトンボの警護産卵)
  24-105mmレンズを24mmに設定、これにクローズアップレンズとストロボを組み合わせた作品。
(ムカシトンボ♂のなわばり争い)


 24-105mmレンズを用いますが、ピントリングを最短値に、ズームは最ワイドの24mmに設定します。また、飛翔シーンを狙う際のシャッタースピードは、1000分の1から2000分の1としています。トンボをうまく画面の中に収めることすら容易ではありませんが、この技術をマスターできると、トンボ撮影の世界が一気に広がります。もちろん、チョウを始めとする色々な昆虫写真撮影にも応用できます。
最後に足元対策です。写真撮影だけの人たちは、採集する人たちを非難しがちです。ただ、後者は用が済めばすぐ次の現場に移動しますが、前者はモデルがいる限りその場に留まり続けます。普通の靴で撮影している人は足元を気にして、つい水際の植物を足場に使いがちです。結果、水辺の植物や岸辺が踏み固められ、トンボたちの暮らしに必要な環境に、大きなダメージを与えてしまうことも少なくありません。撮影現場の多くは泥深い水辺なので、長靴は必需品といえます。できれば胴長着用など、自身の足元ではなく、トンボたちの快適環境を破壊しないことに意識を持っていけるくらいの足元対策をお願いできれば、と思います。そのことは再度の撮影を行うであろうカメラマン自身にとっても、有益であることは言うまでもありません。




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