ムカシトンボは、オニヤンマを小さくしたような、黒地に黄色斑がある全長5cmほどのトンボです。体つきは普通のトンボですが、イトトンボやカワトンボのようにハネを閉じて止まる不思議な習性を持っています。実は、あのシーラカンスやカブトガニなどと同じ、「生きた化石」と称される生物の一種なのです。地球上の生物はおよそ6500万年前、恐竜時代から哺乳類時代へと入れ替わりました。シーラカンスは3億年前、ムカシトンボは1億数千万年前に栄えた仲間の特徴を残しているとされ、つまり6500万年前の壁を乗り越えてきた生物に与えられた称号が「生きた化石」というわけです。
さて、ムカシトンボの仲間はユーラシア大陸を中心として世界中から60種ほどの化石が見つかっています。生きたムカシトンボの仲間は、2010年まで日本とヒマラヤ地方に1種ずつ、とされてきましたが、2011年に中国から新種のムカシトンボが発見されたとの発表がなされ、現在は世界中で3種、ということになっています。生物は環境変化に伴い、進化または退化といった具合に姿や形を変え、あるいは絶滅してしまいます。太古の時代に栄えた生物の存在は、そこに往時の環境がそのまま維持されている証といえるのです。 |