トンボ王国でつながる命

トンボ王国でつながる命


 トンボの産卵行動は、他の昆虫と比較にならないほど多様です。基本は止まって行うか、飛びながら行うか。次は卵を産み込む場所で、水中、泥中、植物組織中などがあります。最も注目して欲しいところは、交尾後のオスが連結や警護飛翔などを行って、メスの産卵に立ち会うことです。トンボのオスは、フェミニストなのでしょうか?それとも…トンボ王国では、管理の行き届いた水辺で、様々な産卵行動を容易く観察することができます。なお、( )内はよく見られる期間です。





カトリヤンマ

1.カトリヤンマ

 メス単独で産卵管を用い、湿った泥の中に卵を産み込みます。(9〜10月)


ヤブヤンマ

2.ヤブヤンマ

 カトリヤンマと同じ産卵方法です。(6〜8月)


サラサヤンマ

3.サラサヤンマ

 メス単独で産卵管を用い、湿った泥もしくは朽木の中などに卵を産み込みます。(5〜6月)


ネアカヨシヤンマ

4.ネアカヨシヤンマ

 サラサヤンマと同じ産卵方法です。(6〜8月)


アオモンイトトンボ

5.アオモンイトトンボ

 メス単独で産卵管を用い、水面近くの植物に卵を産み込みます。(5〜10月)


アジアイトトンボ

6.アジアイトトンボ

 アオモンイトトンボと同じ産卵方法で、潜水産卵も行います。(5〜10月)


モートンイトトンボ

7.モートンイトトンボ

 アオモンイトトンボ、アジアイトトンボと同じですが、植物が密生した場所を選びます。(5〜6月)


コフキヒメイトトンボ

コフキヒメイトトンボ
8.コフキヒメイトトンボ
 アオモンイトトンボ、アジアイトトンボと同じ産卵方法ですが、産卵するメスの近くでオスが見張りをします。(6〜9月)


ハグロトンボ

ハグロトンボ
9.ハグロトンボ
 基本的にアオモンイトトンボなどと同じ産卵方法です。潜水産卵もします。(7〜9月)


アサヒナカワトンボ

10.アサヒナカワトンボ

 ハグロトンボと同じですが、朽木もよく産卵場所に選ばれます。(5〜6月)


クロスジギンヤンマ

11.クロスジギンヤンマ

 アオモンイトトンボなどと同じ産卵方法ですが、かなり神経質です。


マルタンヤンマ

12.マルタンヤンマ

 基本的にクロスジギンヤンマなどと同じ産卵方法ですが、水面から直立するように密生している植物がよく選ばれます。


シコクトゲオトンボ

シコクトゲオトンボ
13.シコクトゲオトンボ
 アサヒナカワトンボに似た産卵をします。老熟個体では、しばしば空中産卵(遊離性静止産卵)も行います。(6〜7月)


コシボソヤンマ

14.コシボソヤンマ

 クロスジギンヤンマと同じですが、産卵場所は基本的に朽木です。(8〜9月)


ミルンヤンマ

15.ミルンヤンマ

 基本的にコシボソヤンマと同じ産卵方法です。


クロイトトンボ

クロイトトンボ
16.クロイトトンボ
 メスが産卵管で水面近くの植物に卵を産み込みますが、基本的にオスとメスが連結して行います(連結産卵)。個体数の多い水辺では、よく潜水産卵を行います。(5〜9月)


オオイトトンボ

オオイトトンボ
17.オオイトトンボ
 クロイトトンボと同じ産卵方法です。(5〜9月)


セスジイトトンボ

セスジイトトンボ
18.セスジイトトンボ
 クロイトトンボとオオイトトンボと同じですが、生息環境は基本的に河川です。(6〜9月)


ギンヤンマ

19.ギンヤンマ

 クロイトトンボなどと同じ植物組織内産卵方法ですがヤンマ科としては珍しく連結が主流です。(6〜9月)


ホソミオツネントンボ

20.ホソミオツネントンボ

 クロイトトンボなどと同じ産卵方法ですが、産卵場所は水面に張り出す生きた植物の組織内です。(4〜5月)


アオイトトンボ

アオイトトンボ
21.アオイトトンボ
 現時点でトンボ王国内での観察例はありませんが、ホソミオツネントンボと同じ産卵方式です。ただし、潜水産卵もします。(10〜11月)


オオアオイトトンボ

22.オオアオイトトンボ

 ホソミオツネントンボと同じですが、産卵場所は水辺に張り出した樹木の組織内です。(10月〜11月)


ホソミイトトンボ

23.ホソミイトトンボ

 クロイトトンボなどと同じですが、オスはやや斜め気味に立って辺りを見張ります。(越冬型4〜5月・夏期型7〜8月)




キイトトンボ

24.キイトトンボ

 ホソミイトトンボに似ますが、オスは完全に直立して辺りを見張ります。(6〜9月)


ベニイトトンボ

25.ベニイトトンボ

 キイトトンボと同じ産卵方法です。(6〜9月)


モノサシトンボ

26.モノサシトンボ

 キイトトンボなどと同じ産卵方法です。(6〜9月)


チョウトンボ

27.チョウトンボ

 少しずつ移動しながら、腹の先を水面に付けて放卵します。(6〜9月)


ショウジョウトンボ

28.ショウジョウトンボ

 チョウトンボと同じですが、より敏捷です。(5〜9月)


ベニトンボ

29.ベニトンボ

 チョウトンボなどと同じ産卵方法ですが、移動はよりハイスピードかつランダムです。(6〜10月)


ネキトンボ

30.ネキトンボ

 チョウトンボなどと同じですが、連結産卵が主流です。ただし、トンボ王国では余り見られません。(10月)


ウスバキトンボ

31.ウスバキトンボ

 ネキトンボとほぼ同じですが、より神経質です。


ハネビロトンボ

ハネビロトンボ ハネビロトンボ
32.ハネビロトンボ
 ウスバキトンボ以上に神経質な打水産卵をしますが、連結の時には放卵の瞬間だけ連結を解きます。ただし、今のところトンボ王国での観察例は多くありません。(9〜10月)


ヤマサナエ

33.ヤマサナエ

 停止飛翔して卵塊を作り、適当な大きさになると腹の先で水面をたたいて放卵します。普通、この動作を数回繰り返します。(6月)




コオニヤンマ

34.コオニヤンマ

 ヤマサナエと同じ産卵方法です。(7〜8月)


エゾトンボ

35.エゾトンボ

 基本的にヤマサナエなどと同じ産卵方法ですが、湿った泥の上で産卵することもあります(打泥産卵)。7〜8月)


ハネビロエゾトンボ

36.ハネビロエゾトンボ

 基本的にエゾトンボと同じ産卵方法です。(8〜9月)


コヤマトンボ

37.コヤマトンボ

 流れの上を敏捷に往復飛翔しながら卵塊を作り、適当な大きさになると腹の先で水面をたたいて放卵します。(6月)


オオヤマトンボ

38.オオヤマトンボ

 岸際を敏捷に飛翔しながら卵塊を作り(往復することもあります)、適当な大きさになると腹の先で水面を岸方向にたたいて放卵します。(6〜9月)


トラフトンボ

トラフトンボ
39.トラフトンボ
 水際の植物などに止まって大きな卵塊を作り、適当な大きさになると飛び立って水面近くの植物などに絡めます。ゼラチン質の紐の中で数百〜千数百粒の卵が守られています。(5月)


ハラビロトンボ

40.ハラビロトンボ

 腹部8節の「水かき」を使い、すくい上げた水と共に卵を弾くように飛ばします(飛水産卵)。卵は、水が接着剤となって水際の泥面などに張り付きます。(5〜8月)


シオヤトンボ

41.シオヤトンボ

 ハラビロトンボと同じ飛水産卵です。(4〜5月)


ヨツボシトンボ

42.ヨツボシトンボ

 ハラビロトンボなどと同じ飛水産卵です。(4〜5月)


シオカラトンボ

43.シオカラトンボ

 ハラビロトンボなどと同じ飛水産卵で、オスはよく警護飛翔します。(5〜9月)




オオシオカラトンボ

44.オオシオカラトンボ

 シオカラトンボと同じで、よくオス警護下での飛水産卵を行いますが、動きはよりダイナミックです。(7〜9月)


タカネトンボ

タカネトンボ
45.タカネトンボ
 ハラビロトンボなどと同様、水を接着剤にして水際の泥面などに卵を貼り付けますが、1回打水して腹部の先端に蓄えた水に数粒を放卵、適当な場所に狙いを定め、体全体を振り子のようにして卵が入った水滴を放り投げるように飛ばします(接水打空産卵)。(10月)


キトンボ

キトンボ キトンボ
46.キトンボ
 タカネトンボとほぼ同じ産卵方法ですが、連結産卵を行うことと、振り出した腹部が卵を貼り付けたい場所に直接当たることが多いなどの違いがあります。11〜12月)


ミナミヤンマ

ミナミヤンマ
47.ミナミヤンマ
 現時点ではトンボ王国内での産卵観察例はありませんが、参考までに。渓流中の浅瀬にできた中洲の上を低く飛翔しながら卵塊を作り、適当な大きさになると腹部をゆっくりと振り下ろし、水際に卵塊をそっと置いていきます(触泥産卵)。この動作を、数回から十数回繰り返します。(6〜7月)


コノシメトンボ

コノシメトンボ
48.コノシメトンボ
 ミナミヤンマとほぼ同じ触泥産卵をしますが、場所は水田などの明るい湿地であること、連結産卵が主流などの違いがあります。また、移動を伴う打水産卵もします。(10〜11月)


キイロサナエ

キイロサナエ キイロサナエ
49.キイロサナエ
 流れの岸辺で、湿った泥の上を腹の先で打ち付けるようにして産卵します(打泥産卵)。卵は、泥の中に埋め込まれます。増水などで適当な泥面が見当たらない時には、水際の植物などに止まって卵塊を作り、適当な大きさになると飛び立って腹の先で水面をたたいて放卵します。卵塊を作る時、ヤマサナエなどのように飛び続けたり、水際の植物などに止まったまま腹の先を水中につけて放卵することもあります(静止接水産卵)。(6月)


アキアカネ

50.アキアカネ

 ハネビロエゾトンボと同様の打泥産卵を行いますが、産卵場所がコノシメトンボと同じ湿地であることと、連結産卵が主流になることなどの違いがあります。(10〜11月)


マユタテアカネ

51.マユタテアカネ

 主に連結打泥産卵を行いますが、アキアカネなどが体全体を振り下ろすようにして腹先を泥面に打ち付けるのに対し、マユタテアカネは接地の瞬間に腹部を内側に曲げ、より泥深く卵を埋め込んでいきます(挿泥気味の打泥産卵)。(9〜11月)


マイコアカネ

52.マイコアカネ

 マユタテアカネと同じ、挿泥気味の打泥産卵をします。(10〜11月)


ヒメアカネ

53.ヒメアカネ

 湿った泥の中に、長大な産卵弁を深く突き刺して産卵します(挿泥産卵)。アカトンボ属としては珍しくメス単独での産卵が普通ですが、干渉個体(主にオス)が多い場所では連結産卵も少なくありません。また、挿泥の際、静止することも、よくあります。(10〜11月)




オニヤンマ

54.オニヤンマ

 緩い流れの、砂や泥が堆積した場所で飛びながらリズミカルかつ力強い挿泥産卵をします。(8月〜9月)


ナツアカネ

ナツアカネ ナツアカネ
55.ナツアカネ
 水際でやや低空で飛びながら、卵を落下させていきます。連結時には強い上下動が見られますが(連結打空産卵)、メス単独になると上下動はほぼ無くなります(停止飛翔産卵)。また、産卵中に止まってしまうこともあります。(10月〜11月)


ノシメトンボ

ノシメトンボ
56.ノシメトンボ
ナツアカネと同じ産卵方法ですが、動作はよりダイナミックです。(9月〜10月)


ダビドサナエ

57.ダビドサナエ

 現時点でトンボ王国内での観察例はありませんが、メス単独でナツアカネなどのような停止飛翔産卵をします。(5月)


リスアカネ

リスアカネ
58.リスアカネ
 ナツアカネなどと同じ空中産卵ですが、連結でも単独でも上下動は無くなりません。単独時には、腹部を振り出す度に卵は一粒ずつ前方に向かって弾かれるように飛んでいきます(単独打空産卵)。(9月〜10月)


タベサナエ

59.タベサナエ

 水際の植物群落付近で打空産卵しますが、卵は一度に数粒〜十数粒飛散します。(4〜5月)


コシアキトンボ

60.コシアキトンボ

 水面から少し上の湿った場所に、打泥産卵するようにして十数粒〜数十粒の卵を貼り付けます。(6〜8月)


コフキトンボ

61.コフキトンボ

 コシアキトンボのように、水面近くの植物などに卵を貼り付けますが、貼り付ける場所はごく浅い水中です。(6〜9月)


アメイロトンボ

62.アメイロトンボ

 コフキトンボのようにごく浅い水中にある植物に卵を貼り付けますが、その動作は極めて気忙しく逆三角形を描きます。(6〜8月)


ウチワヤンマ

ウチワヤンマ
63.ウチワヤンマ
 水面上を低く飛びながら卵塊を作り、水際の植物などに粘着性の強い紐でつながった卵を絡み付けていきます。(6〜8月)


タイワンウチワヤンマ

64.タイワンウチワヤンマ

 ウチワヤンマ同様、飛びながら卵塊を作って水際の植物などに粘着性の強い紐でつながった卵を絡み付けていきますが、より敏捷で、卵塊を作る際の高度が高く、植物などに静止することもあります。(8〜9月)







トンボ王国でつながる命


 トンボ王国では、トンボ以外にも多くの生き物が人の手を借りて命をつないでいます。



ツリフネソウは…

ツリフネソウは…

 ホシホウジャクに花粉を運んでもらいます。


コイは…

コイは…

 増水を利用して川を遡上し、産卵します。


ニホンアカガエルは…

ニホンアカガエルは…

 湿地保護区で真冬に産卵します。


ツバメのヒナは…

ツバメのヒナは…

 トンボを食べて大きくなります…

 

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