四万十川の魚
増加する魚種の示唆
 現在200種余りの魚類が記録されている四万十川水系ですが、1990年代前半までではまだ140種ほどでした。1990年台に入って記録されたもののうち、ゴマハゼやルリヨシノボリなどは単に調査不足が原因と思われますが、大半は複数の環境変化に起因しているものと考えざるをえません。
ゴマハゼ
 一つ目は物理的な要因。高度成長時代、四万十川の川砂利は良質な建築資材として広範かつ大量に採取されてきました。その結果、河床低下を招き感潮域が拡大。さらに、放置田や放置林の増加を主要因とする流域の保水力低下に加え、豪雨とかんばつが繰り返される、温暖化に起因すると考えられる降雨形態の変化も加わり、特に夏期を中心とする少雨期には河口域がほとんど海水化するようになっています。これが近年の、オヤビッチャ、ハコフグなど多くの海水魚発見につながっているものと推察されます。
 二つ目が温暖化による熱帯性種の増加。河口が黒潮に開けている四万十川では、以前からユゴイなど沖縄本島付近が土着の北限と考えられていたいくつかの種が、無効分散魚として時々記録されていました。しかし現在、ノボリハゼ、クチサケハゼなど種子島付近が分布北限と考えられていた種はほぼ定着しているものと思われるほか、ヤエヤマノコギリハゼ、マツゲハゼなど、八重山群島以南に生息とされている種までも、しばしば発見されるようになっています。2010年9月に記録されたスジモヨウフグは、河口域の海水化と温暖化を如実に物語っています。
ゴマハゼ 
オヤビッチャ ハコフグ
オヤビッチャ ハコフグ
ユゴイ スジモヨウフグ
ユゴイ スジモヨウフグ
 一河川として、恐らく記録魚種日本一と考えられる四万十川ですが、このことは必ずしも良好な自然環境が保たれているという理由からだけではないのです。


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